てんとう虫

おんなの足の甲に、てんとう虫が止まっていた。

女はベンチに腰掛け、サンダルを投げ出しアイスを食べていた。

女は、てんとう虫に気がついていなかった。

てんとう虫は、足の甲からくるぶしのあたりにぐるりと回り、なにやらまごついたと思うと、再び足の甲に戻ってくる。

そんな動きを2,3度繰り返すと急に羽を広げ少しだけ飛んだ。

てんとう虫は女のスカートの縁当たりに止まった。

膝より少しだけ下の当たりで、てんとう虫は黙っている。

もちろん、てんとう虫が言葉を話したことなんて無い。

けれど、そのてんとう虫はとても寡黙なやつに思えた。

 

女は、スカートの縁に止まったままのてんとう虫に気がついた。

じっ、と興味深そうに見つめると、すこしだけ口元が緩んだ。

女は、アイスを口にくわえ、脇に置いた鞄の中からてんとう虫のポーチを取り出した。

それを膝の上に置き、てんとう虫と一緒に写るように、スマホで写真におさめた。

 

アイスを食べ終わると、女はてんとう虫に手を伸ばした。

てんとう虫は女の手の中でじっとしている。

女は、さっきよりも注意深くてんとう虫を観察した。

触角だけが忙しそうに動き続けていた。