つかず、はなれず

結婚や出産を経験する友達がちらほら出てきて、もうそんな歳なんだなぁ、とか思っていると、生命の始まりや終わりが、いつまで経っても自分の中で現実味を持たないことに少しだけ焦りのようなものを感じる。生や死について体験を重ねることが、人間をはぐくみ、自分自身やアウトプットがより豊かになっていく。話の中では、そんな風に取り扱われることが多い。そして、それはおそらく間違ってはいない、と思う。

 

僕は、憶えている限り3回だけ、身近な死に遭遇したことがある。
一度目は、母方の祖母が亡くなった時。その後、彼女の夫、つまり僕の祖父はみるみるうちに憔悴していき、アルツハイマーを発症してしまった。
二度目は、友達のお兄ちゃんが亡くなった時。小学生の時、兄弟共に仲良く、家に泊まりに行くことも頻繁だった。高校生になってから、亡くなった旨を伝えるメールを受け取るも、これに対してどう反応したら良いかわからず、「ご愁傷さまでした」みたいなそっけない返事をしてしまったことを今でもたまに思い出す。
三度目は15年ほど飼っていた犬が死んだ時。大学2年生の夏、土曜日の朝、リビングのソファの上で死んでいるところを父親が見つけた。殆ど世話をしていなかった姉だけが、大声で泣いていた。

 

これらの体験を経ても、死が僕の心に実感として迫ることはなく、どこか遠い場所の知らない誰かの出来事のように、素っ気ない記憶としてのみ生きている。
死を現実として受け入れられないほど、精神が未成熟なのか。対象への思い入れが比較的弱かったのか。あるいは他の理由なのかわからないが、どうにも釈然といていない。今でも。

 


Sufjan Stevens, "Death With Dignity" (Official Audio)

Sufjan Stevensの(スフィアン・スティーブンス)の『CARRIE & LOWELL』というアルバムの1曲目に入っているこの曲のタイトルは「Death With Dignity」つまり、尊厳死

歌詞はかなり抽象的だが、自身の中に確かに存在する「何か」との対話や、老いた雌馬や柳の木といった「死」感じさせるモチーフが所々に使われている。

アルバムタイトルのCARRIEとLOWELLはそれぞれ彼の両親の名前で、2012年にCARRIEが亡くなったことによって、制作を開始したらしい。

ジャケットには、二人の写真が使われている。

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ちなみにスフィアン・スティーブンス4月に公開する映画、『Call Me By Your Name』の主題歌も担当している。

 

 


African Flower

Duke Ellingtonのピアノによる一曲。この曲は映画「うたかたの日々(ムード・インディゴ)」のラストシーン、主人公の恋人のクロエが、肺の中に咲いた蓮の花のせいで死んでしまった後の場面で使用されていた。あまりにも「死」や「西洋の葬式」を連想させる曲。誰かを悼んで書いた曲なのかな。